家族を役員にするメリット・デメリット
結論
家族を役員に加えることで業務分担や所得の分散といったメリットがある一方、役員報酬の金額設定や社会保険への加入義務など、実務上確認しておくべき点があります。特に、職務内容に見合わない高額な役員報酬は税務上「不相当に高額」と判断され、損金算入が認められない場合がある点に注意が必要です。
家族を役員にするメリット
配偶者や家族を役員に加えることで、契約実務・経理・営業など業務を分担でき、代表者一人にかかる負担を軽減できます。また、役員報酬という形で所得を家族間に分散させることで、世帯全体の所得税の負担が緩和される場合があります(所得税は累進課税のため、一人に集中させるより分散させたほうが税率を抑えられるケースがあります)。
役員報酬の設定で注意したいこと
法人税法上、役員報酬のうち「不相当に高額」と判断される部分は損金に算入できません(法人税法34条)。職務内容、法人の収益状況、同規模の同業他社の役員報酬の水準などに照らして判断されるため、実際の業務量に見合わない金額を家族役員に支払うと、税務調査で否認されるリスクがあります。特に家族などの「特殊関係使用人」については法人税法36条でも同様の規定があるため、役員報酬は実際の職務内容に見合った金額に設定することが重要です。
社会保険の扱い
家族であっても、役員として一定の報酬を受け取る場合は、他の役員・従業員と同様に社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務が生じるのが原則です。「家族だから加入しなくてよい」という特例はないため、事前に加入要件を確認しておく必要があります。
デメリット・留意点
役員報酬の設定や意思決定の仕組みについて、あらかじめ家族間で認識をすり合わせておかないと、事業運営上の意見の食い違いがそのまま家族関係に影響するリスクがあります。また、事業承継や将来の株式譲渡を考える場合、家族間の株主構成が複雑になりやすい点にも留意が必要です。
家族を役員に加える前に確認したいこと
役員報酬の額が実際の職務内容・業務量に見合っているか
同規模の同業他社と比べて役員報酬が不相当に高額になっていないか
社会保険(健康保険・厚生年金)への加入要件を満たしているか確認したか
役員報酬の決め方・将来の株式構成について家族間で認識をすり合わせたか
よくある質問
家族を役員にすると税金は安くなりますか?
所得を家族間に分散させることで世帯全体の所得税負担が緩和される場合がありますが、役員報酬が実際の職務内容に見合わない高額なものだと「不相当に高額」として損金算入が否認されるリスクがあるため、慎重な設定が必要です。
配偶者を非常勤役員にすることはできますか?
可能です。ただし非常勤であっても、報酬額は実際の職務内容・業務量に見合った金額に設定する必要があります。
執筆・監修: 小嶋 勇輝(宅地建物取引士)